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【外伝】千歳、翡翠洞攻略編:#9

水無月みと

作者の水無月みと(@MinazukiMito)です。新話投稿したらTwitterでお知らせするのでフォローしてください。

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捨て身

『全軍へ通達。敵を全てケンシに擦り付けろ。そしてまとめて吹き飛ばせ』

『『『『はぁ???』』』』

『ホシガキッ!?端折はしょりすぎだボケ!』

『コケさんあの人意味わかんねっす』

『コケさん変人が狂人にクラスチェンジしてます。こっちの処理が先ですか』

『みんな案外余裕でウケる~w』

ぶつくさと五月蝿いな。俺は端的に必要事項を伝えただけだ。

『ケンシだ。どうするかは分かったけど何したいかがわかんねえ』

『聞くところそこ?まじかお前、ホシガキに理解あるのか言葉の理解力ないのかどっち』

『ケンシさんアンタ堂々と抹殺宣言されてますけど?』

『うるさい脳筋、お前の仕事は死ぬまで生き残るだけ・・・』

『黙れホシガキ!俺が説明する!』

『コケさんに感謝』

『コケさんそろそろ胃に穴とか開きませんか。うるさい変人の口にセメントでも流し込みましょうか。自分アサシンなんで』

『心配ありがとう・・・。とりあえず大丈夫だ。説明させてくれ』

まあ、こんな状況だがパニックで前後不覚になっている奴はいないようだな。流石は高難度ダンジョンの斥侯を任されるだけの面子。肝の据わり方が違う。俺への態度は不服だが。

『なるほどな。わかったけど流石に30体近く一気に来られたらそんな長くもたねえぞ』

『もたせろ脳筋』

『黙れ変人』

今度はトンビか。というか未だにあいつの現在地が掴めんな。苔の助曰くあいつも戦力になっているらしいが、奴の戦闘の気配が全くない。ド派手に暴れているケンシとは対照的だ。

時間経過と共に多少は敵の数も減ってはいる。それでも数が多い事に変わりはない。ケンシのHPも今のところは8割温存しているとは言え、現実的にもたせられるのは数秒だろう。

作戦開始

『まあいい、どの道ちんたらと時間をかけるつもりはない。作戦行動が開始されたら俺の段取りに従って動け。まずは・・・』

今回集まっているメンバーは、俺とケンシ、4人のサポート班を除く全てが斥侯班所属。つまりシーフやアサシンといった、奇襲からの一撃必殺や隠密行動に特化した者が大半。

多数に囲まれ、奇襲も隠密行動もやりようがない今の状況が不利なのは至極当然のことだ。

ならば、作戦終了時点で一撃必殺が通用する程度に敵の数とHPを削っておく必要がある。

ケンシを戦力として数に加えることが出来るのは良くて一瞬、それも1撃がせいぜい。

これからケンシが抜けることを考えれば、正面からの通常戦闘が出来るのは実質俺1人。そして俺は全力で戦える状態に無い。

敵の中には一切の魔法攻撃が効かないアンチマジック持ちが居る。防御力の高い竜麟持ち、継戦能力の高い自己再生持ちは、作戦が上手くいったとしても生き残る可能性が高い。

ならば止めを刺すために、こちらも白兵戦を継続する余力を残さなければならない。

『以上だ。全員理解したか』

『『『『『了解』』』』』

『では作戦開始だ。ケンシに近い者から敵視を移して外周へ移動しろ!』

号令に従い、ケンシは敵視を上昇させるスキルを発動させ、更に広範囲攻撃を連続して放つことで手当たり次第に敵を集めていく。

ガンガン削れていくケンシのHPを見ながら、すみやかに敵視の移譲と外周への移動を遂行する。

『トンビだ。全員移動完了。配置についた』

『よし、では煙幕投下!!』

斥侯班主体の面子故に、ほぼ全員が所持していたアイテムがあった。

斥侯班の常備品”煙幕”。ただのアイテムを投げ込むだけなら、戦闘能力に不安のあるサポート班でも問題なく参加できる。

通常の使い方は単なる目暗ましだが、今回の目的は別だ。

ケンシを中心とした敵軍のそこかしこで、軽い炸裂音とともに真っ黒な煙が立ち上る。

今回使用している煙幕は、Bチームの研究オタクがふざけ半分に作った「黒い小麦粉の塊」。質は悪いが、とにかく粉の量が多い。顔面に叩きつけられれば視界ゼロになるばかりでなく、むせ返る事必至のアイテムだ。

『全弾投下!』

『結界を張れ!ケンシ、やれ!』

『おう!!』

敵軍全体をドーム状に覆う結界が展開され、それが完成すると同時にケンシによる全力の炎属性高威力攻撃。この後脱落が確定しているので後先など考える必要はない。遠慮は一切無しで全てを出し切る。

Gーsideゲームはフィジカルリアルの身体で参加できるゲーム故に、リアルな自然現象も再現される。

例えば単に団扇で煽いでもゲームシステム上で風がおきていると判断されるし、それが極軽量なモンスターにあたれば吹き飛ばす事だって出来る。

ゲームである以上あくまでシステム内での現象の再現だが、これを攻撃に転用することは可能なのだ。

中心から発生した火炎流が結界内を巡り、充満していた煙幕に引火。即ち、粉塵爆発。

ドォンッ!!!

と轟音が響き、結界内が真っ赤に染まる。炎攻撃はアンデットへのクリティカル。ついでに自然現象なので、アンチマジック持ちにも関係なく攻撃が通る。

『結界はまだ解くな。内部の炎の勢いが衰えてくるのを待て』

結界で密閉された空間。その内部で燃焼が起きればいずれ酸素は燃え尽き、一見すると鎮火したような状態になる。しかし実際には火種までなくなる訳ではない。

火種が残った状態で、結界の解除と共に一気に酸素が供給されればどうなるか。

『頃合いだな。各自数人で固まって小規模結界を張れ。自分まで巻き込まれて死ぬような無様はさらすなよ』

『一言多いんだよホシガキ。心配無用だっての』

『そうか。では、解除』

「喰らえ、バックドラフトだ!!」

結界が解除されると同時、先ほどの粉塵爆発にも劣らぬ爆燃が発生する。2度にわたる爆発炎上。ここまでやれば、敵も相当に削れるはずだ。

「てめぇら全員突っ込め!味方1人犠牲にしといてここで根性見せねえ奴は叩きのめすぞ!!!」

トンビか。わざわざTalkを使わずに怒声で焚きつけるとは。流石は元強豪サッカー部所属。煽り方を解っている。

「「「うぉぉぉぁぁぁ!!!!」」」

外周で待機していた仲間が一斉に飛び出し、まだ息のある敵を刈り取っていく。

叫びながら突撃したら隠密もクソもないんだが、良いのか斥侯班。最初に叫んだお前らの上長は既にどこに行ったかわからんが。

「あははッ!さくさく~♪テンポ良好で子気味イイねぇ~♪」

イイ笑顔で楽し気に敵の間を進む派手な女が1人。通り道にいた敵は切り刻まれて次々と消えていく。シュシュだな。あの絵面は完全に猟奇殺人鬼だが大丈夫か?群を抜いて怖いぞ。

「さて、俺も行くか」

外周に近い敵を無視し、中心に向かって走る。標的は決めてあった。

『あと頼んだ』

『誰に言っている』

道すがら、役目を終えてHPを枯らしたケンシとすれ違う。サポート班にはすぐに蘇生させろと言ったが、正直これ以上あいつに働かせるつもりはない。

ケンシが脱落した以上、奴の抜けた穴を埋めるべきは俺だ。

「フン。やはり生き残っていたか。しぶといな」

直前までケンシと互角にやり合っていた強敵。複合のスケルトンジェネラル。焼け焦げて灰になりかけた骨の体は、自己再生により元の色と形を取り戻しつつあった。

「喜べ。さっきまでのように片手間ではなく、集中して相手してやるぞ」

周りの雑魚は仲間に任せる。ここからの俺の仕事は、こいつの始末だ。

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水無月みと

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