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【外伝】千歳、翡翠洞攻略編:#2

水無月みと

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ダンジョン突入(前編)

報告会の翌日。現在地はカンゴームの外れにあるダンジョン”翡翠洞ひすいどう”。その5階層にある、隠しルートへの分岐点だ。

「この分岐点は、ギミックを作動させると一時的に隔離空間が発生する。空間内に大量のモンスターが発生し、その撃破数が自軍の5倍の数になるまで延々と戦い続けることになる。発生するモンスターのランクはAまたはAAだ。このダンジョンの通常ルートのラスボスがAランクな事を考えると、ボス以上の敵を雑魚として処理できる戦力が必要って事だな」

「更に性格の悪いことにぃ、隔離空間内に謎解き系のギミックが同時発生するんですよぉ。しかもその謎解きっていうのが毎回内容違うし!斥侯班は今日までで7回突入してるんですけどぉ、同じ内容には1回も当たらず!マジ性格悪いわー」

「謎解きギミックに関しては俺の部隊が対処してやる。先に雑魚の掃除をしてからギミックに集中しても良いが、戦闘馬鹿がこれだけ揃っているのだからそのくらいの仕事は片付けられるだろう。俺たちが解く前に半分も片付いていないようなら見捨てて帰るぞ」

トンビ・シュシュ・ホシガキの発言に気を引き締める一同。まずはここを突破できなければ話にならない。

部隊は事前の打ち合わせ通り、俺・ケンシ・センナ・ホシガキを部隊長として4つ。

均等にメンバーを割り振ったわけではなく、部隊長の得意分野とメンバーたちの希望を考慮して編成されている。あくまで本人の希望を最優先にしており、A・Bチームは混合だ。

ホシガキ隊。成果主義のホシガキと、こいつの要求に応えられるメンバーで構成。”仕事は自力で片付けろ”が共通理念。というか、そうでなければホシガキの下ではやってられない。他の部隊に比して頭脳・戦闘共に個人の能力が高い。エリート特殊部隊の様相をていしている。今回の部隊構成において最小人数。

ケンシ隊。単純戦闘能力ではギルド1位であるケンシを筆頭に、とにかく戦闘能力に極振り。良く言えば火力重視。悪く言えば脳筋。戦闘能力が高い分、それ以外のサポート・ギミック処理分野に難あり。

センナ隊。”姉御”と慕われるセンナだけに、男女を問わず若い年齢層の者が多い。Bチームリーダーらしく、”楽しけりゃオールオッケー”がモットー。かなりクセの強い戦闘スタイルの奴もちらほらいる。

ディッキア隊。最大人数。メンバー同士で補い合い、集団で勝ちに行くスタイル。ホシガキ隊の対極に位置する構成。メンバーの特性がばらついている為器用貧乏とも言うが、その分状況に応じた対応能力は高い。

「それじゃあ始めるよ」

苔の助が壁の一点に近づく。

翡翠洞はその名通り洞窟型のダンジョン。岩肌の迷宮だが、その壁面には所々に緑色の鉱石が顔を覗かせていて、淡い輝きで内部を照らしている。翡翠って輝くような宝石ではなかったと思うんだが、そこはゲームだから気にしない。

苔の助が手を伸ばした壁面にはやはり緑色の石が埋まっているが、その石だけは他とは違い、緑色の石の中心に赤が混じっている。

周囲が薄暗い上に、山ほどある鉱石の内のたった一つだ。注意していなければ見落とすだろう。これを発見するとは流石斥侯班だ。

石に向かって火魔法を発動させ、一定時間燃やし続ける。すると「ビシッ」という音と共に石が砕け、同時に周辺の景色が一変した。

こういう長期戦って、旨い物食えないのが地味にキツい・・・。常温でも保存できるやつ持ってくか。ハルも食うだろうし

隠しルートへ

「へえ。さっきまでとは一気に雰囲気が変わるな」

さっきまでいた岩に囲まれた洞窟ではなく、宮殿の大広間のような空間だ。薄暗いのは相変わらずだが。

そして報告によれば、ここから先は出現モンスターの系統ががらりと変わる。通常ルートに居るのは動物やゴーレム系だったが、ここからはアンデットだ。

「「「オオオオオォォオォォウウゥウ・・・・・・・・・」」」

気味の悪い声を上げながらモンスターが出現してきた。

あるものは壁をすり抜け、あるものは地面から湧き出してくる。ゴーストにゾンビにスケルトン。今いるだけでもかなり多いが、出現総数は味方の人数の5倍。

全て一度には入りきらないので、倒したそばからおかわりが入場なさる仕様になっている。

前方がモンスターに埋め尽くされて睨み合いが始まったかと思えば、今度は壁や天井に大量の絵画が出現する。

普通に紳士や貴婦人を描いた肖像画もあれば、何かの物語の一幕を描いたとみられるものもあった。

あれが謎解きギミックに関わるんだろう。

フィールドの準備が整うと、今度は視界にカウントダウンが表示される。もちろん戦闘が開始されるまでのカウントダウンだが、時間は30秒。結構長い時間設定だが任意で短縮することもできる。

これを短縮する奴は2種類に分けられる。使い方をわかってない素人か、そういう戦闘スタイルじゃない奴だ。俺たちは有効に活用させてもらう。

「よっしゃあ!!行くぞお前らァ!!!」

「雑魚なんざワンパンで蹴散らせ!!こんなのは前座にもなんねぇぞ!!」

「温存とかつまんねえこと考えんなよ!!気持ちよくブッ放して火葬してやれ!!」

「もたもたしてっと全部アタシらが貰ってくからな!貢献度と褒章が欲しい奴は死ぬ気で殺しにかかれ!!!」

やかましい上にガラの悪い事この上ないが、今から始まるのは戦いだ。大暴れしてやろうって時にお上品に澄ましてちゃ、戦闘意欲なんて湧きやしない。

そして、unknownプレイヤーが参加する戦いにおいて、仲間の士気の高さはそのまま”バフ”という形で強化に直結する。

≪16・・・、15・・・、14・・・≫

戦いの前の高揚感。テンションが上がれば上がるほど、俺たちは強くなる。
叫ぶ・怒鳴る・振りかざす。カウントダウンの数字が少なくなるほどに上がっていくボルテージ。

謎解き担当のホシガキ隊と斥侯班の一部は落ち着いているが、あいつらは元々こういう士気の上げ方をするタイプじゃない。俺たちが居なかったら、カウントダウンも短縮してさっさと戦闘を始めているだろう。

≪戦闘開始まで残り3秒。プレイヤーは戦闘態勢を執られたし≫

「始まるぞ!!全員構えろ!!」

「イグナーツ班抜剣!!突っ込んで引き付けるぞ!」

≪2・・・、1・・・≫

「銃砲部隊外すなよ!1陣が作った隙を逃すな!」

≪戦闘開始≫

「1陣突撃!!!」

システムアナウンスが戦闘開始を告げるとともに、俺たちと敵モンスターの間を隔てていた光の壁が消滅。

同時に先鋒を務める1陣が一斉に飛び出した。

1陣を構成するのはバイク乗りなど機動力に優れた者。俺も1陣として一番最初に接敵する。

1陣の役割は敵を倒す事ではない。最初の一撃を入れ、ターゲットを自分に向けさせることだ。

俺はバイクで突進しながら銃を構える。今回は敵が多いので、バイク自体もカスタマイズして機関銃を搭載している。車体左右に2門。適当に走り回るだけで相当数の敵を巻き込める。

更に自分で担ぐ銃の弾は散弾。殺傷能力よりも攻撃範囲重視だ。

大挙しているモンスターの間を縫ってとにかく前に進む。方向転換するたびに、バイクに搭載した機関銃が敵側の被害を拡大させていく。

「おらぁッ!!ハハハハ!」

少し離れた右隣を高笑いしながら別のバイク乗りが走り抜けている。ケンシ隊所属のガイラだ。こいつは俺とは違い、敵を避けて細かく方向転換するようなまどろっこしい事はせず、豪快に敵を薙ぎ払いながら驀進ばくしんしていく。

バイクのコントロールはアシスタントAIと自動運転に任せ、本人は攻撃のみに専念。自分の身長よりも巨大な戦斧を振り回して、進行方向にいるモンスターを文字通り吹っ飛ばしている。

戦斧を振り回してアンデットを吹き飛ばし高笑いする男。やってる方は爽快だろうが絵面がやばい。完全に人外の所業だ。

トルデリーゼ!左後方に取りこぼしだ!ランベルトオスヴィン!左右を頼む!」

「「「了解!」」」

ガイラとは逆、俺の左やや後方で隊列を組んで進むのはイグナーツ班だ。

こいつらはセンナ隊所属。その特徴は、50人を超える大部隊となっている今回の攻略で5人しか参加していない、本物の”騎馬兵”である。イグナーツ班はその内の4人。普段から固定パーティーを組んでいる為、連携は半端ではない。

Gーsideでは通常、特殊磁場による安全システムを適用させるために金属製の乗り物のみが使用を許可されている。しかし、馬はその唯一の例外だ。

生物であるために扱いの難しさは他の乗り物の比ではない。何せ馬自身の意志で勝手に動くのだ。それをGーsideで戦闘中に乗りこなすなど、騎手自身の腕が要求されるのは言うまでもない。

それを完璧に御してみせる軍服の集団。今回参加している仲間の中でも、かなり見応えあるプレイヤーの一角と言える。

班長イグナーツを中心として、左右を進むランベルトとオスヴィン。3人ともサーベルを携えて馬を駆り、すれ違い様に敵を斬りつけていく。

そして3人の後方を陣取るトルデリーゼ。ピストルを構えて3人が攻撃しきれなかった取りこぼしを次々に撃ち抜いている。

む?馬に興味があるのか!?ならば乗れ!!そんな遠くから眺めるだけで、馬達の魅力を解った気になるなよ!!

追撃

1陣が敵の集団の半ばまで食い込んだ頃を見計らい、後方からセンナの号令が飛んだ。

「2陣用意!撃て!!」

2陣は魔法・射撃を主体とした遠隔攻撃部隊だ。

敵後方を目指して直進を続ける1陣に気を取られ、2陣以下の味方に背中を向けていたモンスター達に、魔弾・銃弾・砲弾その他が雨あられと降り注ぐ。

1陣の攻撃で仕留められたモンスターは少数だったが、この攻撃で前列がほぼ全滅。更に中列以降に居た連中のHPもガンガン削られていく。

「3陣出るぞ!!付いて来い!!」

2陣に息を吐かせる間も無く、ケンシが3陣を率いて攻撃を開始した。

3陣は主に近接戦闘を得意とする。一部2陣に参加していた魔法戦士系も一緒に飛び出しているが。

3陣は大半がジェットシューズ装備。上空から1陣の真後ろまで飛び越えてくる奴や、地上を疾走して暗殺者的に立ち回っている奴もいる。

殲滅の要となる部隊だけに、参戦が始まっただけで一気に敵の数が減る。

「おかわり来てんぞ!いきなり後ろに湧くかもしれねーから注意しろ!」

2陣、3陣の参戦で減ったモンスターだが、空いたスペースを埋めるように新しい奴がポップし続ける。こうなってくると注意しなければいけないのは、2陣のいる後方だ。

開戦直後と違い、後から入ってきたモンスターは自陣中央だろうが関係なく湧いてくる。

一部待機している者や遠近どちらも対応できる奴がいるから大丈夫だろうが、それでも遠隔攻撃主体の2陣のそばに敵が湧くのは嬉しくない。

俺は一旦敵陣を突破しきって即反転し、来た道を戻るように自陣の方向へバイクを走らせる。

左右に展開して規則正しく前進した開戦直後と違い、今や元々いた敵味方だけでなく3陣と追加モンスターが加わり入り乱れ、まさしく乱戦となっていた。

次話へ

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